日本株運用者の視点

経営者の投資目利き、アナリストの見極め

2018年06月14日

森 弘美

森 弘美

日本株式 セクターアナリスト

小売業界は久しく、アベノミクスによる恩恵を受けて来ました。同政策が2013年に本格始動して以降、2014年~2015年にかけ2年連続で小売企業各社による値上げがおおむね成功した結果、小売業界では「インフレ(値上げ)が全てを癒す」状態が続いていました。しかしながら、2016年頃からその勢いが落ち、2017年に至っては売上が伸び悩む中で人手不足や人件費増が深刻化し、労働集約度の高い小売企業や運輸企業の多くは経費増に苦しむこととなりました。

売上が容易には伸びない環境下では、過去の投資の巧拙により企業業績に差が生じることとなります。例えば、デジタル化投資により効率的な顧客分析・販促活動を実現させていたり、人材への投資により必要な人員を確保したりしている企業は順調に業績を拡大させています。日本のように成熟した人口減少社会で「客数」を増やせている企業は多くはありません。一方で、ターゲットを絞り、スマホのアプリなどを通じて顧客に対し個別のアプローチが出来ている、もしくは顧客の共感を呼ぶ商品をタイムリーに揃え、効果的に訴えるノウハウを磨いている企業は「客単価」を継続的に上昇させつつあります。加えて、一般消費財の小売りであっても、価格勝負で量を捌こうとする企業のマーケティング手法は年々厳しくなっている印象があります。

2018年は人手不足問題の「第二波」が到来しており、各企業とも省人化・省力化投資を更に増やさざるを得ない状況に陥りつつあります。今までの過少投資のツケが回ってきている企業もあれば、デジタル化投資やアプリ開発などで先行企業に追いつこうとしている企業、そしてポスト・スマホやキャッシュレスなどといった長期的な傾向を見据えて準備を進めている企業など、経営者の見ている方向は様々に分かれています。

2018年2月期・3月期の企業決算では、過去の投資の巧拙が業績の明暗という形になって顕在化しました。企業にとって投資はもちろん必要ですが、「何に」、「いくら」、「どのように」投資をするか、そしてそれらが「本当に生産性改善につながるのか」が今後の焦点と考えます。投資に際しての経営者の目利き力 ー つまりヒト・モノ・カネ・組織の競争力維持のために的確な投資をしているか ー が、企業業績が概ね強い時にはその差が覆い隠されていても、数年後には果実の大小となって顕れます。足元は生産性改善・維持のための投資が増えていますが、それらが利益となってどのように跳ね返るかを見極めるのが、アナリストの重要な仕事である、との認識を日々新たにしています。

 

  本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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